㊧Kengo Kito,buoyancy of color #9 (detail)©Kengo Kito、㊥Kohei Nawa, PixCell-Shoe #13 (L), 2024 (detail). Photography: Nobutada OMOTE © Kohei Nawa、㊨Daisuke Ohba,M,2024 (detail). Photography:Nobutada OMOTE© Daisuke Ohba
アシックスが展開する日本発のファッションブランド「Onitsuka Tiger(オニツカタイガー)」のアートギャラリープロジェクト“Tiger Gallery”は、国内外で高い評価を受け、京都芸術大学大学院で教鞭を執る鬼頭健吾氏、大庭大介氏、名和晃平氏を起用したプロジェクト初となるグループ展「FLARE」を、10月10日(木)から11月8日(金)まで、イギリス・ロンドンのリージェントストリートにあるOnitsuka Tiger旗艦店のギャラリースペースで開催する。
今回のグループ展のために、計27点の新作が特別に制作され、名和氏の代表作である「PixCell」シリーズからは、Onitsuka Tigerのスニーカーを使用した作品も登場する。
グループ展「FLARE」では、さまざまな素材やアプローチ、コンセプトを織り交ぜることで、現代的な在り方の不確実性から宇宙の誕生にまでさかのぼるような壮大な物語が展開される。絵画と彫刻、インスタレーションが、空間・時間・光のダイナミックな相互作用を映し出し、パラドックスと可能性に満ちた新たな次元へと鑑賞者を誘う。
2024年5月、アーティストたちが本展の構想を練っている間に、過去数十年で最も激しい太陽フレアが発生し、世界各地でオーロラが観測されるなど大きな注目を集めた。そして奇しくも数年前、アーティストたちは「太陽」と題した合同展を京都で開催していた。名和晃平氏は、この偶然のつながりを熟考する中で、天空のスペクタクルへのオマージュとして、またアーティストたち同士が結びついた創造的な旅路へのオマージュとして、本展のタイトルに「FLARE」を提案した。太古のエネルギーでありながら未来を照らす太陽のように、「FLARE」は、現在から未来までを通じた時代の本質と可能性を探究している。
鬼頭健吾氏の絵画やフラフープを用いたインスタレーション作品は、円を無限につながる線へと変容させている。さらにそれが大きな交差する円へと変わることで、相互に関係しあう密接なつながりを強く思い起こさせる。鬼頭氏の作品は「円は完全無欠であると同時にまったくの無でもあり、直線は精神的な道筋を表す」という禅の思想に触れながら、円と線、完全性と空虚さの関係性を表現してきた。本展では、シリーズ初となる黒いチューブだけを使ったインスタレーション作品が、白い空間にオニツカタイガーストライプのように力強い線を描き出す。
独自のマテリアルや描画手法を用いることで知られる大庭大介氏の絵画は、光を浴びることで多方向にその色彩を拡散させ、時間と空間が交錯する新たな次元としての”絵画の場”を創出している。大庭氏は「2つの消失点から生まれる『虹』は、光と鑑賞者、そして絵画との関係によって、円の中心で融合し、時間と光が交錯する空間を生み出す。その空間は、例えば存在のモザイクとして、人類が作り出す社会や文化を包摂する。そして、その瞬息万変する視覚空間を目の当たりにすることは、不確実な世界を把握する唯一の真実と言えるだろう。まさに流動する光のように、我々は幽玄の余白を生きている」と語る。鑑賞者はこの空間のあわいで、不確実な世界の儚さを目の当たりにする。
名和晃平氏は、平面から立体まで複数の作品シリーズを通じて、本展の持つ広がりを描き出す。連続するドットの群によって構成される「Moment」や「Red Code」は、情報空間から宇宙空間にまで遍在するデジタル信号やノイズを実体化している。また本展では、名和氏の代表作「PixCell」「Prism」「Trans」から、Onitsuka Tigerのスニーカーをモチーフに使用した新作が登場する。人間の直立性に関わる靴は、身体を大地に接地させ、人間と街を結びつけ、アクションや動作の出発点を象徴するなど多様な意味を帯びている。名和氏はそんな靴を彫刻へと変換することを通じて、都市に生きる私たちが持つさまざまなリアリティの側面を浮かび上がらせている。