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2025年05月14日

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ゴールドウインが展開する「Allbirds(オールバーズ)」が次のステージへ――サステナブルなうえビジネスカジュアルとしても履けるシューズとしてアピール

サステナブルなスニーカーブランドとして知られる「Allbirds(オールバーズ)」が、株式会社ゴールドウインによって日本市場で新たな展開をスタートさせている。


「オールバーズ」は2016年、米国サンフランシスコで生まれた。サッカー 元ニュージーランド代表選手のティム・ブラウン氏と、バイオテクノロジーの専門家であるジョーイ・ズウィリンジャー氏の2人により、‟根幹にサステナビリティを据えたモノづくりを行う”ブランドとして、最高級のメリノウールを使った「Wool Runner(ウールランナー)」を生み出した。


サステナブルなモノづくりで世界的に注目を浴びるようになった「オールバーズ」は2020年1月、東京・原宿にコンセプトストア(Allbirds 原宿)をオープンして日本に上陸、ECを含めた消費者への直接販売で事業を進め、その後、Allbirds 丸の内、Allbirds グランフロント大阪をオープンしている。


「オールバーズ」がシューズ業界で先進的なのは、カーボンフットプリント(CFP)*1を2020年から全製品に表示し、CFPゼロを目指してサステナビリティへの取り組みを加速してきたこと。アッパーには、ユーカリの木の繊維やリサイクルポリエステル、再生型農場で生産されたメリノウールなどを、ミッドソールにはサトウキビ由来のSweetFoam(スウィートフォーム)を使うことなどでCFPの低減に努め、食品のカロリー表示のように、地球のためにCFPを知ることが当たり前の世の中になることを目指している。

*1 カーボンフットプリント(CFP)=製品を作るために排出された、あらゆる温室効果ガスの排出量をCO₂の排出量に換算したもの。kg CO₂eで表示される。


事業戦略の転換を受け2024年6月からゴールドウインがDTC事業に卸販売事業を加え日本市場で販売拡大へ

そうしたなか、コロナ禍で直営店が苦戦することなどを経験した「オールバーズ」は、世界的な事業戦略転換を発表した。直営店とECでビジネスを構築するDTCスタイルから、各国のローカルパートナーを起用したディストリビューションスタイルに変更するというもので、日本事業はゴールドウインが担うことになった。


「オールバーズ」は、製品に自然素材を積極的に使用するといったユニークなシューズブランドであり、サステナビリティに関してはB Corp認証*2を受けるなど、先進的な取り組みを行っている。ゴールドウインでは、「オールバーズ」が同社の既存のブランドと競合することがなく、DTC事業と卸販売事業を合わせることで、日本国内により広げることができるのではないか、と考えた。

*2 B Corp(B Corporation)認証=アメリカに本拠をおく非営利団体、B Labが創設、運営する認証制度。環境や社会に配慮した事業活動を行うとともに、アカウンタビリティや透明性など、一定の基準を満たした企業にのみ与えられる国際的な認証。


そこでゴールドウインは2024年6月、オールバーズ事業部を立ち上げて、「オールバーズ」の取り扱いをスタートした。今年3月までの初年度は、直営3店舗の運営を引き継ぎ、「オールバーズ」のECサイトをゴールドウインの総合ECサイト(Goldwin Online Store)に統合するとともに、同社が扱う商品としての品質基準チェックや在庫管理・物流オペレーションの再編に奔走した。同社では、初年度を「小さな植木鉢から大きな植木鉢に植え替えた期間に位置付け、今期から根を張って成長させる段階に入る」と説明する。


卸販売については、2025年秋冬シーズンからの本格展開に向けて、百貨店やファッションセレクトにアプローチをかけている。現在は、一部の同社直営店やセレクトショップでテスト的に販売しており、春夏からポップアップショップの展開も行っていく。また、堅調に推移している「オールバーズ」の直営店については、新規顧客とのタッチポイントを増やすことをミッションに、2026年から新店舗をオープンさせる方針。


サステナブルなモノづくりに加え、快適でシンプルなデザイン、そして洗濯機で洗えるという利便性で注目される

「オールバーズ」の製品は、創業モデルのWool Runner(ウールランナー)に続き、2018年にはベストセラーモデルとなっているユーカリの木の繊維で作られるTree(ツリー)シリーズのTree Runner(ツリーランナー)を発売、2020年には初のランニングシューズTree Dasher(ツリーダッシャー)、続いて女性向けのフラットシューズ、Tree Breezer(ツリーブリーザー)などをラインアップに加えた。各モデルをアップデートする際には、快適性を向上させながらCFPの低減をはかってきた。「オールバーズ」は、2030年までに製品の平均CFPをほぼゼロにすることを目標に掲げており、2020年に9.97kg CO₂eあった商品あたりの平均CFPは、2023年には5.54kg CO₂eと、ほぼ半減させている。


「オールバーズ」は、‟根幹にサステナビリティを据えたモノづくりを行う”ブランドであることが他社との差別化ポイントになっているが、愛用者からは、①「快適」であること=雲の上を歩いているかのような履き心地。そしてフィット感が良く、靴ズレしないこと。②「デザイン性」=ミニマルかつシンプルなシルエットで無駄がなく、さまざまなオケージョンに適応する。さらに③「洗える」こと=天然素材を使用しているので洗濯機で丸洗いできる利便性の高さ、という3つのポイントで共感を呼んでいる。


Tree Runner(ツリーランナー)、Tree Breezer(ツリーブリーザー)、Tree Runner Go Travel(ツリーランナーゴートラベル)を中心にオンタイムでも使えるアイテムとして訴求

すべて定番のTree Runner(ツリーランナー)。ユニセックスサイズ展開で、価格は1万6500円(税込)。㊧Jet Black(Black Sole)、㊥Jet Black(White Sole)、㊨Mist(White Sole)。ユーカリの木の繊維から作ったFSC認証テンセル・リヨセルを使ったメッシュのアッパーを採用し通気性に優れる。ミッドソールはサトウキビ由来のEVA素材、SweetFoam。シューレースはペットボトル再生材、インソールはヒマシ油ベースの素材を使用している。CFPは4.99kg CO₂e

同ブランドでは、2025年春夏のシーズン施策について、新年度が始まる4月からの生活において、「オールバーズ」がさまざまな世代が抱える問題を解決するシューズであることを訴求していく。


例えば、新社会人を含めた20代には、オールバーズが軽量でミニマルなデザイン、ストレスを感じない靴下のようなフィット感、そして洗濯機で丸洗いができるビジネスカジュアルとしても使えるシューズであること、そして毎日のベースとなって社会人生活の後押しができるシューズとしてアピールしていく。

女性に人気No.1のTree Breezer(ツリーブリーザー)。価格は1万5950円(税込)。カラーは㊧Jet Black(Black Sole)、㊥Natural White(Natural White Sole)、㊨Stony Beige(Stony Beige Sole)。靴ズレ知らずのフラットシューズで、外反母趾にも優しい。ユーカリの木の繊維から作ったFSC認証テンセル・リヨセルを使ったメッシュのアッパーで通気性に優れ、アウトソールはサトウキビ由来のEVA素材であるSweetFoamを採用。インソールはヒマシ油ベースの資材を使用している。なお、CFPは2.93kg CO₂e

㊧Tree RunnerのKaikoura White(White Sole)、㊥Tree RunnerのForage Tan(White Sole) ともに1万6500円(税込)。㊨Tree Runner Go Travel(ツリーランナーゴートラベル)のBlizzard Hazy Indigo(Blizzard Sole) 1万8150円(税込)。Tree Runnerについては上記参照。Tree Runner Go Travelはクッション性に優れ、旅行などでの移動で1日中履いていても快適に過ごせる、旅行等で重宝するアイテム。ユーカリの木の繊維から作ったFSC認証テンセル・リヨセルを使ったメッシュのアッパーで通気性に優れ、アウトソールはサトウキビ由来のEVA素材であるSweetFoamを採用。インソールはヒマシ油ベースの素材を使用している。Blizzard Hazy Indigo(Blizzard Sole)は限定カラー。CFPは4.89kg CO₂e。

また、忙しく働く30代には出勤から帰宅するまでのオンタイムすべてを快適に動けるシューズとして、さらに40~50代に向けてはこれまで履いていた革靴の代わりになるシューズというように、各年代のニーズにアプローチしていく。


日本上陸5周年の2025年、ネットゼロ・カーボンフットプリントシューズ「M0.0NSHOT Zero(ムーンショット ゼロ)」を世界で限定販売――業界のマイルストーンになる取り組み

「オールバーズ」が日本に上陸して5周年を迎えた2025年、シューズ業界にとって画期的なことが起こった。それは、2年前の2023年3月に発表していた世界初のネットゼロ・カーボンフットプリントシューズが、ついに「M0.0NSHOT Zero(ムーンショット ゼロ)」として、4月5日から数量限定で一般発売されたことだ。


同ブランドでは、「これは業界のマイルストーンになるものであり、今まで成し遂げられなかった不可能に挑戦して、業界の概念を一新する」ものと説明する。日本での販売を開始してから「オールバーズ」は、多くの顧客と出会い、さまざまな課題を解決することに取り組んできた。ムーンショット ゼロは、その集大成であり、CFPにとっての最終形を実際に見てもらうことで、一般販売しているシューズが向かうべき方向を指し示している。


さらに「オールバーズ」は、ムーンショット ゼロの製品化にとどまらず、ムーンショット ゼロの開発にあたって素材から製造、輸送、廃棄、CFP計算などを詳細に説明したキット「Recipe BO.OK(レシピ・ブック)」を作成し、その手法をオープンソース化している。つまり、どうやってネットゼロのCFPシューズを作ったかを公開している。


これは、ネットゼロのCFPシューズをオールバーズだけのものにするのではなく、シューズを生業とする多くの会社が手を取り合い、多くのブランドがネットゼロのCFPシューズを作ることで地球温暖化対策につなげる、その懸け橋になる思いが詰まっている。



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