日本皮革産業連合会、皮革・革製品の正確な情報を業界全体で統一発信する「Thinking Leather Action=TLA」事業を推進――川北座長による説明会を開く
動物由来ではない素材を革に似せて○○レザーと呼ぶことが自体が問題
③皮革は石油素材に比べて環境負荷が高いのか?
答え:皮革は石油素材に比べ、環境負荷が高いとは言えない。
解説:アパレルの国際的な業界団体であるSAC(サステナブル・アパレル連合)による環境・社会付加測定ツールで、皮革の環境負荷が大きいと2012年に発表され、そのイメージが先行した。その後、データの取り方等に問題があったことが明らかになっている。また、素材の誕生から廃棄まで(ライフサイクルアセスメント)で比較すると、長持ちする天然皮革は寿命が短い素材に比べ、環境負荷が小さく、サステナブルであると言える。
④革の代替素材(ヴィーガンレザーなど)は皮革よりサステナブルであるのか?
答え:ヴィーガンレザーなどと呼ばれる素材は、皮革と比べてエコでサステナブルとは言い切れない。
解説:ヴィーガンレザーなどと呼ばれる素材は、現状では“つなぎ”に石油系の樹脂を使ったものが多かったり、製品寿命が短かかったり、強度が皮革より劣るものが多数存在する。
そして、川北座長が強調するのは、「問題なのは、動物由来ではない素材を革に似せて○○レザーと呼ぶこと。革製品を扱う売り場からも対処してほしいとの声が出ている」という。
また、革に似せた○○レザーと呼ばれる商品のプロモーションの多くが、「天然皮革よりも環境負荷が少ない」とか、「動物を殺さないので倫理的に良い」といった文言を使っていること。川北座長は「恣意的に、あるいは無意識に皮革と比較し、攻撃することにつながっている。リンゴから生まれたならば、アップルマテリアルで良いはずが、なぜかアップルレザーと言って、皮革と比較するのがトレンドになっている。最近では、ウッドレザーというのも出回ってきた。木の端材を粉にしてウレタン樹脂で固めたもので、ウッド素材ではなく、ウッドレザーと表現することで革よりも環境に優しいとうたっている」と苦言を呈する。
世界的にはISOや、日本のJISでも「革」や「レザー」の定義は、動物の皮、動物由来のものでなければならない、と記載されており、イタリアやポルトガル、ブラジルでは動物由来以外の製品に「レザー」と言うワードを使用することを法律で禁じている。日本はそこまで行っていないが、JISでの強化の動きもあるという。
日本皮革産業連合会では、消費者に向けて「革製品のためだけに、動物の命をいただくことはありません」「革製品を使うと、脱炭素につながります」「お肉、革製品、化粧品など、動物からいただいた命は、余すことなく活用」「革製品は長持ち。だから地球にやさしい」という4つのメッセージに沿って、「実は、革ってサステナブル」を発信していく考えで、リーフレットをつくって配布していく。
今年(2022年)度は、東京、名古屋、大阪、姫路、豊岡で業界内向けの説明会を開催し、合計で約500人が参加した。川北座長は「業界内でも意外と知らない方がいることが分かった。とくに若い方の認識度合が低いので、知識の統一化をはかっていく。参加者からは、『以前からこの問題が頭にあったが、説明を聴いて頭の中が整理でき、“もやもやが晴れた”』とか、『これで自信を持って売っていける』といった声が挙がっていると話す。4月以降は、消費者や学生に向けて情報を発信していく予定だ。
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