富田興業、傷やシミのあるレザーを生かす産学連携プロジェクト「レッザ レジリエンス」の展示会を開く――国際ファッション専門職大学の学生が試作品を説明

LEZZA RESILIENCEから生み出された試作品。㊤左から「LEDライトカバー」、「花束の包装革」。㊦左から「藍染の財布」、「インテリアにもなる猫の爪とぎ」と「レザーステッカー」
富田興業は、国際ファッション専門職大学(東京都新宿区)との産学連携プロジェクト「LEZZA RESILIENCE(レッザ レジリエンス)」の展示会を1月に東京・台東区の富田興業本社ショールームで開催し、このプロジェクトに参加した国際ファッション専門職大学の学生が試作品などの説明にあたった。
食肉の副産物である原皮には、動物が生きていた時についた傷や虫刺され痕などが少なからず残っている。皮革業界では、その傷やシミの状況によって等級分けされ、とくに傷やシミの多いD級レザー*は、皮革問屋に活用されないまま保管され、資源ロスをまねいている。
※これまで「B級やC級で残っているレザー」「残っている下物」など曖昧な言い方をされてきた革や原皮を同プロジェクトでは「D級レザー」という呼び方に統一している。

傷やシミのあるレザー
富田興業は、食の副産物である皮の鞣しや染色に、食品加工や製造の現場で生じるワインやお茶柄のボマース(搾りかす)を使う「LEZZA BOTANICA」を立ち上げており、これに国際ファッション専門職大学の平井秀樹教授が着目。学習のひとつとして捉えた取り組みとして始まった。そして、富田興業のスタッフ18人と国際ファッション専門職大学の学生16人が4チームに分かれ、D級レザーを使った試作品の開発にチャレンジした。
製品化に向けて課題となったのが、レザーの傷やシミを「生かすのか」「隠すのか」。LEDライトカバーを開発したチームは、革づくりから参画し、傷やシミを“星”に見立て、コロナ禍で家にいる時間が長いことから寝室用のライトの需要があると考えた。花束の包装革を試作したチームは、革に大きめのパンチングを施すことで傷などを分かりにくくした。プレゼントされた側が花瓶や箱を包むことに再利用でき、廃棄されないものとして提案した。
傷をつけても良い商品とした「インテリアにもなる猫の爪とぎ」、そして厚めの化粧を施して傷を隠し、小さな端材でも使える「レザーステッカー」、さらに敢えて傷をデザインの一部とした「藍染の財布」が生み出された。
これらの試作品のなかからは、メーカーやブランドからの声掛けにより、コラボレーションやクラウドファンディングで市場に出回る可能性が出てきている。富田興業の森田正明営業部部長は「今回、プロジェクトに参加した学生は、サステナブル・ネイティブ世代で、環境への問題意識が高い。当社としても意識改革にもつながり、業界の常識から次に進めるきっかけにもなった」としている。

国際ファッション専門職大学の平井秀樹教授(左端)、富田興業森田正明営業部部長(右端)と国際ファッション専門職大学の学生の皆さん