連載【いちがいもんの独り言⑫】からだにあった正しい靴を履いていますか?
「靴選びガイド」田中尚喜氏著。
身体に関わる仕事をされている方たちから、靴に関して良い本がないかと聞かれたら、この本をお勧めしています(=写真)。
普通なら表紙のフレーズは、「足にあった正しい靴を履いていますか?」ですよね? でも、あえて「からだにあった正しい靴を…」とあります。いくら足に合った靴でも、身体の状態や用途に合っていなければ、その人に合った正しい靴とは言えません。だからあえて筆者は「からだにあった…」と書かれたのだと、勝手に解釈しています。
チョットしたフレーズのようですが、著者の田中先生の意志を感じます。初版は2004年に発行された本ですが、私が靴屋として重視していることを理学療法士の立場から説明しています。
「外反偏平足に対して、単にアーチサポートを設置しても機能しないばかりでなく、痛みなどの問題を引き起こすことになります」と。このように本編では、中敷の処方をするよりもまず、しっかりした靴を正しく履いて、足の骨格を整えることを推奨しています。そうすれば、こだわった中敷も効いてきます。
さらに発刊時点では、まだ流行していなかった裸足感覚の基になるシューズについて、「カンフーシューズや体操の靴…などは本当に軽量ですが、どちらかといえば足を包んでいるだけの履物です。鍛練なしには履けない履物です…」。続けて、同じような学童履きの問題も指摘しています。
そして私のお気に入り、サルバトーレ・フェラガモとマレーネ・ディートリヒの名言も紹介しています。フェラガモは自伝の中で「靴のフィッティングの時にもう1つ参考にして欲しいのは、正しい幅合わせができない場合、より狭いものを履くことを習慣にするということだ…(続きは本書で)」と言い、脚線美で有名なマレーネ・ディートリヒはその脚線美の秘訣を記者に聞かれて、「特別なにもしていないわ、ただ母の言いつけを守って靴の紐をきちんとしばって履いているだけよ」と答えたそうです。お洒落でしょ~!
【松下 誠氏のプロフィール】