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2021年05月09日

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連載【トレンドを俯瞰する①-私たちは今、どこに立っているか-】50年前、ファッション化社会を生んだが…

この数年、私が業界の現状について深く心にかかっていることがあります。それは誰もが時代の大きな節目を感じながら、これからどんな時代に向かうのかよく分からぬままに、これまでの延長で市場が存在し、新しい時代の市場や体制への備えが出来ていないことです。


明治150年、1868年欧米から約100年遅れて日本の「近代」が始まりました。戦後は工業化と市場経済で日本は大きく成長しました。


第2次大戦でつくられた国家総動員法をはじめ国の力を徹底的に結集する体制や、それを運営する官僚制度や培われた科学技術も、そのまま戦後の経済成長に大きな役割を果しました。


戦争に負けて20年たった東京オリンピック後の1960年代の後半、日本の「近代」は成長のピークを迎えていましたが、さらなる成長を目指してファッションによる消費の創出が進められました。


日本の「近代」は50年前、ファッション化社会を生んだのです。ファッションによる過剰な消費によるハレの世界で社会は昂揚感につつまれ、国家も企業も成長し、個人も三種の神器に象徴される豊かな生活になりました。


それからの50年を俯瞰し、ときにズームで近寄ってのちにターニングポイントと気づくシーンを確認することで大きな時代の流れ、トレンドの結節点が見えてくるのです。


■「公け」より「個」が優位に

豊かな生活を享受するにつれ、人は次には自由を求めわがままになります。 1950年代後半の多摩や千里のニュータウンは4階建ての2DKで、エレベーターはありませんでした。


しかし10年後の1960年代後半には15階建ての3LDKになりました。夫婦の寝室や子供部屋が求められ、エレベーターもついて近所付き合いは疎遠になりました。プライバシーが求められ、「個」が重んぜられるようになったのです。 


80年代はこうしたトレンドが根底から変わる兆しが見えたまさに近代が成熟し、歴史の転換を予感させる地点でした。国や企業が成長し、個人も豊かになる。個人は世間、公けと共にあったのです。しかし80年代になり、セレクトショップや無印良品は消費者が自由に選んで自分流に使う。世間や公けはどうでもよくなったのです。


■ライフスタイルのカジュアル化

プライバシーが言われ、個が優先し優位にたつ。個人にとって大事なもの、それは健康とラクチンで快適な日常生活と自由な消費です。ライフスタイルのカジュアル化が始まろうとしていたのです。


90年代、競技のためのスポーツシューズが街の履物として代替されるようになった。靴といえば革靴をさす時代ではなくなりました。そして平成が終わろうとしているこの数年、このスポーツシューズを拒んできた百貨店の婦人靴売り場に象徴される大人の女性の市場にもこの流れが見られるようになったのです。


しかし、彼女たちが求めているのはスポーツシューズではなく、彼女たちにふさわしいおしゃれでエレガントなスニーカーだということが分かってきた。スポーツシューズからスニーカーへという、ライフスタイルのカジュアル化が本格化しているのです。


80年代に見え始めた個の優位、ライフスタイルのカジュアル化というトレンドは、2018年の現在、その移行の段階を終えようとしているのです。


平成の30年はまさに150年という日本の近代が終わるエポックでした。


【筒井重勝氏のプロフィール】

大学卒業後、出版社勤務を経て広告制作やマーケティングなど、クリエイティブな仕事に携わり、その後タカキューの商品本部長、丸紅・物資部で皮革に関するアドバイザーなどを歴任。この経験を活かし、1971年にジャパン・レザー・ファッション・インフォーメーション・センター、通称JALFIC(ジャルフィック)を設立。2009年からアイコニックスシステムを主宰し、社会学などを通してシューズ業界を新たな側面から見つめ直すという研究に取り組んでいる。

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