ターゲットは100マイルレースなどロングディスタンスを走破するすべてのランナー
1999年からシューズの展開をスタートさせた「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」が、トレイルランニングシューズの展開に本気で乗り出した。
米国のTHE NORTH FACEプロダクトチームが、革新的でザ・ノース・フェイスらしいシューズを生み出すためのプロジェクトを始動し、2019年初めにゴールドウインのフットウェアチームに開発情報の共有があった。そして、これまでアパレルやバックパックなどで革新的なアイテムを生み出してきたTHE NORTH FACEの考え方をシューズに落とし込むことをベースに、新たなシューズづくりが始まった。
エネルギーロスを軽減するVECTIVテクノロジーを搭載
ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業二部フットウエアグループの木村さん
ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業二部フットウエアグループの木村豪文さんは、開発の経緯を次のように語る。
「開発にあたっては、アスリートと共同で行うというモノづくりの考え方と、今までマーケットにない革新的なシューズをつくり出すことにフォーカス。カテゴリーは、ブランドのオリジンでもある山にフォーカスしたトレイルランニングシューズ。こうして、後に「VECTIV(ベクティブ)」と名付けられるテクノロジーの開発がスタートしました」。
ターゲットは、トレイルランニングのなかで現在、盛り上がりを見せる42㎞以上の100㎞や100マイルといったロングディスタンス(ウルトラトレイル)を走るすべてのランナー。世界最高峰のトレイルランニング大会と言われるUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)では、出場ランナーの39%がリタイアし、完走したランナーでもその40%に何らかのトラブルが発生していた。そしてアスリートは、シューズによってパフォーマンスが向上することに期待しているという。
こうしたランナーへの聞き取り調査を進めるなかで、超長距離を走り切るためのシューズには、①体力温存(エネルギーロスの軽減)、②けがの予防(マメなどができにくい靴内環境)、③天候への対応、が必要とされることが分かった。
ゴールドウインもフランスで試し履きを繰り返し意見をフィードバック
開発にあたりUSAのプロダクトチームに、もうひとつの開発パートナーを新たに迎えた。フランス・アヌシーにあるAll Trianglesという先進のシューズ開発機能を持った工場だ。All Trianglesにはトレイルランナーやスキーガイドなどの経験を持ち、アウトドアを熟知するモノづくりの経験豊かなスタッフ10人ほどが在籍し、工場の中にはラボがあり試作品はすぐに屋外でテストできる環境が整っている。開発初期段階から2者がタッグを組み、いろいろな意見を出し合いながら研究を進めた。
ゴールドウインからも、アジアのランナーが履いても最高のパフォーマンスが発揮できるような、従来より幅と踵のフィット感のあるラスト設計と、機能に基づいたシンプルなデザインをリクエストし、木村さんを始めとする開発メンバーがアヌシーを訪問し、サンプルの試し履きを繰り返して、その意見をフィードバックした。
3Dカーボンプレートとロッカー構造のアウトソールで安定性と推進力に優れる
ウルトラトレイルにおける安定性、推進力、防滑性を生みだすVECTIVテクノロジー
VECTIVテクノロジーのベースになっているのが、FORWARD PROPULSION(推進力)、STABILITY(安定性)、そしてTRACTION(防滑性)。とくにボトムには、安定性を高めるためにサイドまで包み込むような形状にした3Dカーボンプレート(カーボン素材はFLIGHT VECTIVEのみ、その他はPebax 3Dプレート、3D TPUプレートを採用)を搭載し、舟底形状にしたロッカー構造のアウトソールとともに推進力を生み出す。生分解性ラバーを使った独自のサーフェスコントロールソールは、ウェットでもドライでもさまざまな路面状態でもグリップ力に優れる。製品はTHE NORTH FACEのグローバルアスリートによってテストされ、その累計距離は6000マイル以上にもおよぶという。
立体成型された3Dカーボンプレートをトレイルランニングシューズに初搭載。安定性を高めながら推進力を発揮する
VECTIVロッカーミッドソールが着地衝撃を軽減しつつエネルギーを前方への推進力に転換することで足が自然に前に出る
サーフェスCTRLアウトソールがドライからウェットまでさまざまな路面状態に対応する
トレイルランニング3機種のほか、ハイキング、ライフスタイル用も同時発売
ロングディスタンスを走るすべてのトレイルランナーをターゲットとするために、レベルに合わせた3つのラインを用意している。大会で優勝を目指すアスリートのためのFLIGHT VECTIV(100マイルレースで20時間を切るような平均時速9㎞で走るランナー向け、税込2万8050円)、自己記録更新を目指すランナーのためのVECTIV INFINITE(100マイルレースを28時間以内で完走する平均時速6㎞で走るランナー向け、税込2万1890円)、完走を目標とするランナーのためのVECTIV ENDURIS(100マイルレースの完走を目指すレベルの平均時速4㎞で走るランナー向け、税込1万8590円)がある。
FLIGHT VECTIV 2万8050円(税込)
㊧VECTIV INFINITE 2万1890円(税込)
㊨VECTIV ENDURIS 1万8590円(税込)
VECTIVシリーズにはトレイルランニングシューズのほか、ハイキングに対応するVECTIV EXPLORIS MID FUTURELIGHT(防水仕様のミッドカット)、VECTIV EXPLORIS FUTURELIGHT(防水仕様のローカット)、VECTIV ESCAPE(ローカット)、そしてライフスタイルモデルのVECTIV TARAVALもラインアップ。木村さんは「足が前に出る感覚のVECTIVテクノロジーをさまざまな人に体感してもらい、気軽に山に行ったりトレイルランニングを楽しみたいと思ってもらえる人を増やしたい」と話す。
㊧ VECTIV EXPLORIS MID FUTURELIGHT 2万4970円(税込)
㊨VECTIV TARAVAL 1万5950円(税込)
VECTIV全シリーズは、2月18日から世界同時発売された。2021年春夏シーズンは、順次カラー追加を行う予定で、2月26日にはVECTIV ENDURISの日本別注カラーも発売となる。