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2021年08月06日

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アキレスの進化系素材「アクロフォーム」の優位性を紐解く――アキレス、リーガルコーポレーション、世界記録を持つプロ縄跳びプレーヤーの3者に聞く



アキレスは、一般的に靴のソール部に使われるPU素材やEVA素材よりも衝撃吸収性と反発弾性が高く、耐久性にも優れる自社開発の素材「ACROFOAM(アクロフォーム)」を2019年に発表し、2020年から子どもたちの運動能力を引き出すスポーツシューズ「HYPER JUMPER(ハイパージャンパー)」に搭載して販売している。「ハイパージャンパー」では、プロ縄跳びプレーヤーの森口明利さんとスポンサー契約を結んで、その高い性能を訴求中。さらに、「アクロフォーム」の提供を受けたリーガルコーポレーションは、「REGAL(リーガル)」ブランドの国産メンズレザーシューズに搭載し、今年3月1日から全国のリーガルシューズや百貨店約120店舗での販売を開始している。コロナ禍による新しい生活様式が注目されるなか、この進化系素材「アクロフォーム」でどんな新しい未来が描けるのか、アキレスから執行役員シューズ事業部長の海野実さんと研究開発本部応用研究開発グループ長の芦澤弘樹さん、リーガルコーポレーション商品企画一部部長の若松隆行さん、そしてリモート参加した森口明利さんに座談会形式で話を聞いた。


高度なウレタン加工技術から「アクロフォーム」を生み出す


――「アクロフォーム」の開発はどのような形で始まったのでしょうか。


芦澤:開発を始めたのが2014年。シューズ市場では反発弾性が高く、衝撃吸収性にも優れる素材が出てきた時代でした。そこで元々、高度なウレタン加工技術を持っている当社でも、その技術を活かしてシューズ用の新しい素材ができないかと模索し、開発に向けた取り組みが始まりました。

【アキレス研究開発本部応用研究開発グループ長で副部長、工学博士の芦澤弘樹さん】アキレスで全社的な技術開発を行う仕事に従事している。少し先を見据えた商品や社内の技術を組み合わせた商品を開発するなかで、アクロフォームを生み出した。

日本でもランニングをする人が増えるなか、足を痛めるランナーが多いことに着目し、ランニング障害を予防できるようなシューズ、つまり衝撃吸収性が高く、かつ走りやすいように反発弾性にも優れるシューズが開発できないか、と考えました。


そして、当社のさまざまな技術を結集し、約3年をかけてまず、スポーツシューズ用PU素材「MEDIFOAM(メディフォーム)」を開発しました(この「メディフォーム」はアキレスのランニングシューズブランド「メディフォーム」に搭載されている)。


ランニングに特化した「メディフォーム」という素晴らしい素材ができましたので、より広範囲の用途に適した物性を持つ素材の研究開発をさらに進め、生み出したのが「アクロフォーム」になります。「メディフォーム」開発の際にはいくつかの素材を試しましたが、当社の発泡ウレタンの高い技術を上手く活用することで目標とする性能が得られるだろうという考えから、PUベースの素材としています。


優れた素材を使って時代に合った商品をつくり出す



――来年、創業120周年を迎えるリーガルコーポレーションさんは、現代のシューズに求められる機能についてどんな考えをお持ちですか。また、同業でもあるアキレスさんとの協業の想いは。


若松:シューズにとって機能性は重要な部分で、やはり履き心地の追求(履きやすさ、歩きやすさ)につながる大切な要素だと思っています。もちろん、現状の「リーガル」も履き心地に自信を持っていますが、より進化した新しい素材を採用すること、とくにソールの機能については履き心地に直結すると考えています。


当社は、靴づくりについて約120年という長い歴史を持つ会社です。ただし、靴をつくりあげることは得意である一方、使う素材や材料については、素材メーカーさんや問屋さんを通じて調達しています。素材や材料そのものを自社でつくり上げるのは、とても難しいこと。優れた素材を開発できるアキレスさんと手を組むことによって、時代に合った商品をつくり出すことができたと思っています。以前でしたら、靴をつくっているという点で同業の会社と取り組むという発想はありませんでしたが、今となっては自然な流れなのではないかと思っています。


――「アクロフォーム」のどこに着目しましたか。


若松:元々、メディフォームは知っていましたし、この話が進む段階で衝撃は吸収しながら反発弾性があるという素材の性能について、非常におもしろいと思っていました。さらに耐久性についてもEVAに勝ると聞き、当社製品の優位性のひとつでもある「丈夫で長持ち」との共通項があることから、「アクロフォーム」に非常に興味を持ちました。

【リーガルコーポレーション商品企画一部部長の若松隆行さん】「リーガル」ブランドをメインに紳士靴、婦人靴の商品開発全般を担当している。今回、アキレスと協業して“衝撃が反発に変わる”レザーシューズを開発した。

私自身、今回発売した「リーガル」のシューズを発売前の3~4カ月間、試し履きをしてきましたが、着地の際の安定感ある衝撃吸収と蹴り出しのところでの反発弾性という、素材の良さが実感でき、このミッドソールの優秀性を確信しています。


2社の協業により次の新しい靴の世界をつくる


――逆にアキレスさんはリーガルコーポレーションさんとの協業をどう思っているのでしょうか。


海野:リーガルコーポレーションさんは誰もが知っている靴メーカーです。私自身、高校生時代から「リーガル」のローファーを履き、成人式にはブリティッシュコレクションを履いて出席したことを覚えています。そのようなリーガルコーポレーションさんと協業できたことは、個人的には夢のような想いです。実は両者には以前から取り引きがあり、約5年前に当社から声をかけさせていただき、協業が実現しました。今回の取り組みにあたり、工場も見学させていただきましたが、靴づくりに関する飽くなき探求心に感心し、改めてリーガルコーポレーションさんの靴が多くの人に支持される理由が分かりました。

【アキレス執行役員シューズ事業部長の海野実さん】ハイパージャンパーでスポンサー契約している森口さんには、「8重跳びに挑戦している新聞記事を見て、すぐに連絡を取った」と話す。

今回、リーガルコーポレーションさんの靴づくりに、当社の「アクロフォーム」を良い意味で合致できたことで、次の新しい靴の世界ができるのではないかと大きく期待しているところです。


バランス良く高く跳ぶために「ハイパージャンパー」は有効


――森口さんには、まず縄跳びの魅力についてお聞きしたいと思います。


森口:小学生から縄跳びを始めた縄跳び少年でしたが、本格的に始めたのは大学からになります。元々ジャンプするのが好きな少年だったのですが、大学に縄跳びのサークルがあって、その体験会に行ったことがきっかけです。


縄跳びは、今やっている7重跳びとか8重跳びのほかに、足の下や体の下で交差したり、2本のロープを使うダブルダッチなど、技や跳び方にいろんなバリエーションがあることがおもしろさであり、魅力でもあります。

【プロ縄跳びプレーヤー森口明利さん】京都大学の縄跳びサークル入部から本格的な競技生活をスタート。2017年に7重跳び1回の世界記録を樹立。2020年にアキレスとスポンサー契約を結んで8重跳びにチャレンジ中。現在は、縄跳び教室やパフォーマンスイベントなど、縄跳び一本で活動している。ユーチューブの7重跳びの動画は348万再生を記録している。

――現在、7重跳びという世界記録をお持ちですが、とくに1回の跳躍で何重も跳ぶという競技で難しいところは。


森口:1回で何重も跳ぶために必要なのは、めちゃくちゃ高く跳んで、めちゃくちゃ早く回す、この2点です。ジャンプでは滞空時間をなるべく増やすために、ひざを曲げてギリギリまで着地を我慢するのですが、空中でバランスが崩れると足が早く着いてしまいます。そのため、高く跳ぶなかでも空中でのバランスを崩さないまま、滞空時間を保つことが難しいところです。


――ジャンプとシューズの関連性は。また、「ハイパージャンパー」の反発性については、どのように感じていますか。


森口:ジャンプの際にシューズの果たす役割は大きいと思います。靴によってはバランスが崩れてしまうこともあります。3年ほど前までは薄底シューズで練習していましたが、足が痛くなっていました。アキレスさんの「ハイパージャンパー」は、厚底でクッション性があり衝撃も吸収してくれるので、普段の練習でも使っていますが、跳んでも足が痛くならずに良い練習ができています。


「ハイパージャンパー」は、とくに反発性を保ったまま衝撃を吸収してくれる感じがします。今は、8重跳び用のスペシャルモデルをつくってもらっていますが、それは本当に今までで一番跳べるシューズになっていると思います。


――デザインについてはいかがですか。


森口:ターコイズブルーのモデルが好きで、普段の生活でも履いています。練習でも「ハイパージャンパー」を履き、8重跳びの時は進化版のスペシャルモデルを履いていますので、今は「ハイパージャンパー」しか履いていないですね。


硬度や反発弾性を思いのままに変えられる素材


――アキレスさんにお聞きします。「アクロフォーム」は形状はもちろん、硬度や反発弾性を変えられることもポイントですが。


芦澤:硬度については、2019年10月のプレスリリース配信時点では35~70(アスカーC硬度)*としていましたが、その後開発を進め、現時点では20以下の柔らかさに変えることもできるようになりました。



反発弾性についても高いものから、弾まない低いものまで多様に変えることが可能です。森口さんには現在、耐久性はある程度、犠牲にしつつ反発弾性に特化したものを提供しています。硬度や反発弾性の範囲を広げると、「アクロフォーム」の本質を問われることにもなりかねませんが、最終的にお客様に喜んでもらうためにアレンジできることが強みであり、用途によって物性を変えていると理解していただきたいと思います。


*この硬度の数値を理解しやすい目安としては、60が消しゴム、30がこんにゃく。そして20が手の平くらい、10以下が赤ちゃんの肌。


「リーガル」らしいイメージの革新的なシューズ


――リーガルコーポレーションさんは第1弾としてトラッドデザインの国産レザーシューズを3月1日から発売しましたが評判はいかがですか。


若松:発売からの1週間で、すでに「売れている」という声が届いています。今の生活スタイルに合った斬新なデザインや、実際の履き心地の良さを感じてもらえているのだと思います。比較的若いお客様に手に取っていただき、実売にも結び付いていると聞いていますので、良いスタートが切れたと感じています。


――商品化にあたり、苦心したところはありますか。


若松:まったく新しい製品をつくるにあたり、「リーガル」らしさをどう表現しようかと考えました。通常、コンフォタブルなソールと組み合わせるのは、ソフトなアッパーというのが定説です。しかし今回は、特徴的な丸みのあるラストにあえてリーガルらしさを表現したガラス調の艶っぽいしっかりした素材を持ってきました。このアッパーと新しいソールを組み合わせて、「リーガル」らしいイメージの革新的なシューズとして表現したかったのです。



今回の取り組みで、若年層の新しいお客様にも履いていただきたいですし、働き方や働くスタイルが大きく変わるなかで、そうした時代の変化に敏感な方にも履いてほしいと願っています。


――アキレスさんにお聞きします。「アクロフォーム」を使った商品化はどこまで進んでいますか。


芦澤:現時点ではシューズのみ(「ハイパージャンパー」および「リーガル」)に使われています。当社では別の用途での商品化を進めており、来期中(2021年4月以降)には発売できる予定です。工場や店舗向けに、立ち仕事での疲労感を和らげることを目的とした業務用マットなどは、早い段階でリリースしたいと思っています。


今年5月末に世界記録の8重跳びに再度挑戦


――森口さんは今年、世界記録の8重跳びの再挑戦を計画しているそうですが、意気込みをお聞かせください。



森口:今年に入ってから、かなり良いトレーニングが積めており、身体は去年や一昨年よりも良い感じになってきています。今年は3~4月を調整にあて、5月末くらいに今年初の8重跳びに挑戦したいと計画しています。


昨年、挑戦した時は成功まで、わずか1000分の4秒くらいの差でしたので、滞空時間を去年の0.80秒から0.82秒くらいに延ばすことを目指して練習しています。最低でも0.82秒になれば、今の縄を回す速さの技術力を考えると8重跳びの成功確率が、かなり上がると考えています。


立ち仕事に従事する大人の女性用シューズなどにも展開


――最後にアキレスさん、今後の「アクロフォーム」の展開予定を教えてください。


海野:そもそも「アクロフォーム」は、ひとつの素材の名前をブランド化したものではなく、研究開発本部を中心とした技術の体系、さまざまなアレンジメントの知見のブランドであるという認識です。それぞれの要求特性に合わせていろんなアレンジができることを「アクロフォーム」で実現して、我々の技術を多くのシーンでさまざまなお客様に使っていただきたいと願っています。



アクロフォームを搭載することで「歩きやすい」であるとか「疲れにくい」といった機能を引き出すことが期待できることから、シューズ事業では立ち仕事に対して非常に有効性があると思っています。そのため、シューズのほか中敷きでの展開も視野に、女性用の働き靴や職域シューズなどにも展開できるのではないかと考えています。



左から「アクロフォーム」、アクロフォームを搭載した「ハイパージャンパー」と「リーガル」




今回の座談会形式のインタビューは、新型コロナウイルスの感染防止に配慮し、出席者の間隔を広く取るとともに出席者の間にはアキレス製の飛沫防止フィルムを設置。Webによる出席も併用して行いました。また、インタビュー中は全員マスク着用を徹底しました。



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