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2024年04月25日

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連載【フィッティングの技法⑤】足を靴の中で固定するとは?―土踏まずの固定について

4回目のコラムでは、フィッティングのあるべき状態は「痛みのない足の固定」であり、踵・土踏まず・ボールジョイント周囲の3段備えで構成すること、また踵の固定についての考えを述べた。今回は土踏まずの固定について、その役割とそれを実現するための方法について紹介したい。


役割は2つある。1つ目は、踵部分で受け止めきれなかった足が前方に流れる力を受け止めること。第2中足骨(人さし指側)~第4中足骨(薬指側)のあたりの甲に力をかけ、革靴の中底の土踏まず部と挟むことで、歩行時に足が靴の中で前方に動こうとする力を受け止める。


2つ目は、踵から足指に至る荷重移動をスムーズに行うこと。土踏まずがフィットし適切に固定されていることで、歩行中にボールジョイントが接地した際に、荷重を踵から足指に移動させる時に足が揺れずに運動エネルギーのロスを抑えることができる。


木型形状で実現するための方法論については、踵の固定と同じく、底面のみならず甲と1セットで考える双方からのアプローチが重要になる。

画像1:実足と木型の甲の比較

甲のアプローチについては画像1を参照されたい。私の実足と木型を比較したものであるが、小指側から親指側への甲の立ち上がりは、実足に比べて私が削った木型のほうが、より急激に立ち上がり削り込んでいることが分かる。


立ち上がりが緩やかな実足と急激な木型、この立ち上がりの差分が、甲から土踏まずにかかるテンションとして変換される。甲の中でも第1中足骨のあたりは足の神経が密集しており、痛みや異常を感じやすい一方、第2~第4中足骨はテンションが面で全体的にかかり分散されるので、痛みをかけずに強いテンションをかけることができる。足への負担をかけるリスクを抑えられるので、木型を削り込むには攻めどころである。

画像2:木型の底面を足裏に即して立体的に削り込んでいる

底面のアプローチについては画像2を参照されたい。木型底面において、土踏まず部分を削り込み中底が盛り上がるように加工している。どの程度削り込むかはいくつか論はあるが、まずは足裏の形状に沿って加工するのが良い。そうすることで、足と靴との間に隙間がなくなって歩行時に踵からボールジョイントへの荷重移動がスムーズになり、固定のために抑える足の面積も確保できる。


甲と底面の双方に立体的なメリハリのある木型は、釣り込みや底付けの難易度が格段に上がるため、世の中の多くの靴は甲の立ち上がりが緩やかで中底の起伏も平坦となり、土踏まずの固定ができていないことが少なくない。そのため、フィッティングの差別化要素として最も際立つ項目となり、私の靴の場合は、その点を評価いただきリピーターとなる方々が多い。


日本の熟練された製靴技術でしか成しえない高付加価値の一つとして、是非その実現をご一考頂きたい。


次回以降はボールジョイント周囲のフィッティングについて紹介していきたい。

【著者プロフィール】

二本真(ふたもと・まこと)。1982年生。2007年から靴に興味を持ち木型製作を始める。2012年にJapan Leather Award アマチュア部門賞。2015年に同グランプリを受賞。2016AW/2017SSの東京コレクションでブランドに靴を提供。2018年にオンライン足計測による革靴とのマッチングサイト「#すごいフィッティング(https://fitting.shoes)を開設、5000人以上の足データを収集し、木型設計に活かしている。Twitter(https://twitter.com/Zin_Ryu)でもZinRyuの名前で積極的な情報発信を行う(フォロワー数4300)。現在も一般企業にサイバーセキュリティの専門家として勤務する傍ら靴木型設計を追求している。

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