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2021年08月03日

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連載【フィッティングの技法③】フィッティングのために靴木型が最低限満たすべきこと

木型と足の最も高いラインが一致した木型㊧と一致していない木型

靴の履き心地の大部分は、その靴の形状となる靴木型によって決まる。ご存じのとおり木型は靴の設計図のようなもので、靴製造は木型の形状に基づいて行われている。では、良いフィッティングを実現する木型で最低限満たすべきことは何か?


「足の最も高いラインと、靴木型(ラスト)の最も高いラインが一致している」。私の考えを端的に言えば、このようになる。前者は第1中足骨と呼ばれる親指のラインであり、必ず押さえておくべき最も重要なラインであると考えている。


その利点は2つ。1点目は痛みを和らげつつ足をしっかり固定するため。甲の中でも第1中足骨のあたりは足の皮と骨と神経が密集しており、特に痛みや異常を感じやすい箇所でもある。そのリスクを低減するために、できる限り甲にかかる力を分散する必要がある。木型と足のラインが一致していない、足の形状を踏まえない木型は、木型と足の形状の差が甲への局所的な負担となり結局は足を痛めてしまう。


反対に一致している場合、木型の体積が足より小さかったとしても、足を固定する強い力を甲全体に力が分散することを可能とし、足全体で心地よい圧を感じることができる。それは足に局所的に強い力が常にかかり擦れることで生じる靴擦れを防ぐことにもつながる。


2点目は重さを感じさせない履き心地を実現するため。歩行で片足が宙に浮くときに、靴は甲のどこに乗るべきか?私は第1中足骨であると考える。そのラインが足の甲で最も力を持っており、そこに綺麗に靴が乗っていると300gの靴が400gになったとしても、大して重さを感じない。試しに実験してみてほしい。

第5中足骨(小指側)に指で床に向けて力をかけた状態㊧と第1中足骨に力をかけた状態

具体的な実験方法としては①第1中足骨のラインに、指で床に向けて力をかけた状態で持ち上げてみる。②第5中足骨(小指側)のラインに、指で床に向けて力をかけた状態で持ち上げてみる。同じ力であれば、おそらく①の方が楽に持ち上げられたはずだ。靴が軽く感じるかは、単に靴の自重だけではなく、重さを足の甲に分散できているか。その中でも力があるエリアに靴がフィットし、きちんと荷重をかけられているかという視点が重要である。


残念ながら、木型の最も高いラインを足に合わせている設計の靴は、3万円以上の高級革靴の中でも10%にも満たない。大部分は踵の中心から甲の中心に線を引いた付近に、そのラインを配置している左右対称に近い形状である。その方が製造効率向上や品質安定化には適するのかもしれない。


しかし、設計側としては機能上のあるべき姿を木型に描くことに一度集中してみてはどうか。それを靴として実現することを後工程に委ねることで、日本の熟練された製靴技術でしか成しえない高付加価値な靴を作り、欧米ブランドを凌駕することにつながるのだと信じている。

【著者プロフィール】

二本真(ふたもと・まこと)。1982年生。2007年から靴に興味を持ち木型製作を始める。2012年にJapan Leather Award アマチュア部門賞。2015年に同グランプリを受賞。2016AW/2017SSの東京コレクションでブランドに靴を提供。2018年にオンライン足計測による革靴とのマッチングサイト「#すごいフィッティング(https://fitting.shoes)を開設、5000人以上の足データを収集し、木型設計に活かしている。Twitter(https://twitter.com/Zin_Ryu)でもZinRyuの名前で積極的な情報発信を行う(フォロワー数4300)。現在も一般企業にサイバーセキュリティの専門家として勤務する傍ら靴木型設計を追求している。

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