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2024年10月07日

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連載【トレンドを俯瞰する⑦-私たちは今、どこに立っているか-】「服種の昇格」という法則

■振り返って見れば確かに昇格

服種とは、スーツとかジャケットとか羽織とか袴という、洋服や着物の種類、種別のこと。


「服種の昇格」は、その服種が時代、歳月を経て時とともに格が上がるということです。


階級が下の者が着ていたものを時代が経つと上の階級が着るようになる。


ふだん日常や作業の時に着ていたものが、歳月を経て街着やフォーマルウェアとして着られるようになるというものです。


19世紀の初め、イギリスのブルジョワ商人たちはビジネスで人と会うときはフロックコートでした。部屋の中でくつろいでいるときは、今の背広に近いラウンジコートを着ていました。20世紀になってフロックコートは礼服になり、ラウンジコートは背広、ビジネススーツになりました。格が上がったのです。


日本に黒船が来た頃、アメリカでリーバイス社が創業してつくったデニムのジーンズは男たちの作業着として広まりましたが、100年後の20世紀後半に若者がおしゃれに着るようになり、今では世界中の人々が老若男女を問わず街で着るようになりました。作業着ではなくなったのです。


日本の歴史をさかのぼって見てみたい。平安時代の絵巻物で見かける庶民がふだん着ていた狩衣(かりぎぬ)は、麻でできた袖はついているがヨレヨレのものでした。それが鎌倉、室町時代には直垂(ひたたれ)と呼ばれ武士の普段着になり、鎧の下に着ているのを見ることができます。


江戸時代になると武士のフォーマルウェアになり、素材もきらびやかで豪華なものになりました。相撲の行司さんの衣装として今に残っています。


■カジュアル化進み、後戻りせず

「服種の昇格」は、カジュアル化を歴史が証明しているということでもあります。


「ラクチンで快適」は着実に進み、後戻りしません。人類は絶え間なく解放、カジュアル化を続けてきたのです。解放、カジュアル化は後戻りしません。


スニーカーの流れが浮上し、ブームの気配が見えるたびに一過性だという声があがります。そこにはこれまで続いた現状のものへの執着があります。


しかし50年という歳月を限っても、いかに人々のライフスタイルが簡略化され、解放に向かったかを見れば、一過性ではなく連続性をもっていることがわかります。


ズック靴、運動靴は、世界のメガブランドのステージにのぼったのです。


「服種の昇格」の大きな事例になったのです。


■カジュアル化すなわち解放

障壁を超え、拘束を解放したカジュアル化の歴史は自由と民主化につながっています。そして当面する個人の優位性というトレンドに帰着します。個人の優位性こそSNSに象徴されるデジタル化の文明に符合するカジュアル化の担い手なのです。

しかし、カジュアル化は服種の昇格に見られるように、時の流れにそって直線的に進んだのでしょうか。


その基調は永い歳月の中で不断に持続されながら、実態は強弱を伴って小さなカジュアル化の繰り返しの上に成り立っていたことがわかっています。


それはさながらラセン階段を未来に向かって登るようでもあります。当面する2020年以降の新しい時代へ向けて、ライフスタイルのカジュアル化の具体的な姿を予見しなければなりません。


【筒井重勝氏のプロフィール】

大学卒業後、出版社勤務を経て広告制作やマーケティングなど、クリエイティブな仕事に携わり、その後タカキューの商品本部長、丸紅・物資部で皮革に関するアドバイザーなどを歴任。この経験を活かし、1971年にジャパン・レザー・ファッション・インフォーメーション・センター、通称JALFIC(ジャルフィック)を設立。2009年からアイコニックスシステムを主宰し、社会学などを通してシューズ業界を新たな側面から見つめ直すという研究に取り組んでいる。

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